猫 (2)
隣の部屋に、年配の女性が住んでいる。休日など、息子一家と思しき家族が遊びに来て、孫らしき子供がはしゃいでいるので、それなりのお年と思われる。一方、建物一帯を縄張りとするキジ猫がいる。結構大きな猫で、自分のテリトリーを侵犯する猫と日夜闘争を繰り広げている。住宅近辺には心優しき住人が多く、キジがドアの前で文字通り猫撫で声を出すと、食物を与えたり、寒い冬の晩など部屋に招き入れているようであり、隣の女性もその一人であった。 猫はかなり頻繁に訪れ、撫で声を上げると、女性も何かしら話かけている。その時のキジの声といったら、普段聴いたことの無いような、甘く優しい声なのである。息子家族が来ない時の寂しさからか…